データセンタのサービスを理解する

6.1. 設置場所の安全安心 | 6.3. データセンタ事業者・サービス選定時の注意点

6.2. データセンタのサービスの概要

6.2.1. データセンタのサービスの種類

この節ではデータセンタで利用可能なサービスについて記述します。

データセンタをとりまく用語では、マーケティング上の用語と技術的用語が混在して使われており非常にわかり難い状況となっています。そのため、表面的な表現に惑わされることなく用語の意味する内容を正しく理解することが大切です。ここではデータセンタのサービスを以下の様に分類して説明します。

なお、実際のサービス名や商品名はここで分類した用語とは異なる場合があることにご注意ください。

サービスの名称サービスの概要
共有サーバOSやミドルウェアをサービス事業者が提供し、利用者がサービスを利用するサービス形態。Webやメールを複数ドメイン提供できるようにOSやミドルウェアが設定されているため、1台のサーバを複数の利用者で共有するのが一般的。 
VPS仮想OSをサービス事業者が提供し、利用者がその仮想OSを専有できるサービス形態。
専有サーバハードウェアやOSをサービス事業者が提供し、利用者がそのハードウェア上で稼働するOSを専有して利用できるサービス形態。
ハウジングハードウェアを設置するラックや電源等の施設をサービス事業者が提供し、契約者が機材を持ち込んで利用するサービス形態。

各サービスの提供範囲とソフトウェアの階層を照らし合わせると以下の様になります。赤矢印部分がデータセンタの提供する部分、青矢印が利用者が利用できる部分になります。

共有サーバは設置場所・ハードウェア・OS・ミドルウェア、VPSと専有サーバは設置場所とハードウェア、ハウジングは設置場所を提供します。

図6-1 各サービスが提供する機能

いずれのサービスでも設置場所はデータセンタが用意したビルやラックを利用します。

ハードウェアの所有者は、ハウジングの場合は利用者、共有サーバ・VPS・専有サーバの場合はデータセンタになります。そのため前者はハードウェア費及びハードウェアの保守費用も別途必要になりますし、会計上の資産として計上する必要があります。後者の場合はハードウェアの所有者はデータセンタになるため、管理を任せることができます。

共有サーバ以外はOSやミドルウェアは利用者が自由に利用できますが、管理・運用も行う必要があります。共有サーバでは利用者の自由度が少ない分コンテンツに集中することができます。


6.2.2. データセンタのサービスの技術的概要

データセンタのサービスをより深く理解するため、ここでは技術的概要について説明します。

ハウジングと専有サーバ:

ハウジングでは設置場所を借りて利用者が機器を選定、購入し設置します。一方、専有サーバでは設置済みの機器を利用者が利用する形式になります。

ハウジングは設置場所を借ります。専有サーバはITリソースを利用します。

図6-2 ハウジングと専有サーバ

共有サーバ:

通常ではウェブサービスやメールサービスではドメイン毎に少なくとも1台サーバコンピュータが必要になります。バーチャルホストという技術を利用すると、ひとつのサーバコンピュータで複数のドメインを利用することができます。

共有サーバはバーチャルホスト機能によりウェブやメール等のサービスを利用する形態です。

共有サーバでは同一のハードウェア、OS、ミドルウェア上に複数ドメインのサービスが稼働します。

図6-3 共有サーバのシステム構成

利用者に対しては、ドメイン用のデータ領域とそれに対するアクセスインターフェースが提供されます。例えばウェブサービスの場合、利用者にはデータ領域としてフォルダやそのサブフォルダが提供されます。利用者は専用ツールやFTP等を用いてそれらのフォルダに、コンテンツやCGIなどのファイルをアップロードすることができます。その他のフォルダにデータを配置することや大規模なアプリケーションをインストールすることはできず、サービス事業者が用意したアプリケーションの中から利用したいアプリケーションを選ぶのが一般的です。

共有サーバのうち、1台のサーバコンピュータを1利用者で専有できるサービスを特に「専有サービス」等と呼称するサービスもあります。OSやミドルウェアを利用者が自由に変更できない点で上記の専有サーバとは異なります。

VPSと専有サーバの違い:

通常は一つのハードウェアで同時に実行できるOSは一つだけですが、近年ではハードウェア上に仮想化用の基盤プログラムを稼働させ、その上に複数のOSを同時に実行する仮想化技術が急速に発達しました。

この仕組みを用いて利用者に仮想化されたOS、つまり仮想OSを提供するのがVPSです。仮想OSは仮想化技術により高い独立性を持ちます。また、利用者にとってはOSを専有できるため、専用サーバの様な独立性と自由度を持つサービスを安価に利用することができます。

VPSでは、ハードウェア、仮想化エンジンの上に複数の仮想OSが動作します。専有サーバではハードウェアの上にただ一つのOSが動作します。

図6-4 VPSと専有サーバの違い


コラム:クラウドとは?

最近ではクラウドという用語が話題になっています。これは、上記のサービスと無関係なわけではなく、共有サーバやVPSを更に発展させ、ネットワークの向こう側に置かれた計算資源を必要な時に必要な分だけ利用できる形にしたものです。

クラウドは「何を利用するか」という観点から大きく以下の3つに分類できます。

  • SaaS(Software as a Service): 「アプリケーションを利用する」という観点で共有サーバを更に抽象化したもの
  • PaaS(Platform as a Service): 「OSやミドルウェア等の開発環境を利用する」という観点で共有サーバやVPSを抽象化したもの
  • IaaS(Infrastructure as a Service): 「OSを利用する」という観点でVPSを抽象化したもの。

データセンタのサービスが定額であることに対し、クラウドでは利用した分だけ料金を払う従量課金の形式が一般的です。従量の単位としては、ITリソースの利用時間や通信量、データ保存量などがあります。

この流れを受け、データセンタにもクラウドデータセンタという考え方が生まれつつあります。従来のデータセンタでは、上記の様な設備を冗長化・多重化し、「絶対に壊れない設備」を目指していたため、データセンタを保持・維持するのは非常に高価なものでした。一方、クラウドでは仮想化技術や分散技術を駆使して、複数のサーバ・複数の拠点で冗長システムを構成しています。これにより、壊れることを前提とした物の組み合わせで「絶対に壊れないサービス」を提供することができます。クラウドデータセンタではデータセンタの堅牢性に対する要求を下げることができるため、より安価にデータセンタを建設できます。また、例えデータセンタに万が一のことがあっても、拠点間の冗長化によりサービスは継続できるため、利用者にとってはより安価により安心なサービスを利用できることが期待されます。

いずれにせよ、クラウドという用語に惑わされず利用者にとって本当に必要な機能やコスト等の要件を見極め、最適なサービスを利用することが大切です。


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